私にとってはじめてのオールドレンズ「Helios 44-2」を買って以来、すっかりオールドレンズの魅力に魅せられてしまいました。オールドレンズがどんなものなのかより理解を深めてさらに使いこなしたいと思い、今回私にとって2つ目のオールドレンズとなる、「Flektogon 35mm f2.4」を購入しました。
銘オールドレンズとして名をはせているFlektogon(フレクトゴン)ですが、果たしてどんなレンズなのか、購入までの経緯や使ってみた感想や特徴について、まとめてみたいと思います。
Flektogon 35mm f2.4とは
Flektogonは、東ドイツ(ドイツ民主共和国)のイェナ市に本拠地を置いていた、東ドイツのカール・ツァイス(カール・ツァイス・イェナ)が作っていたレンズです。
第二次世界大戦でドイツが敗れたあと、ドイツが世界に誇る光学機器メーカーであったカール・ツァイスは、東西ドイツそれぞれに二分され、東ドイツのカール・ツァイス・イェナと西ドイツのカール・ツァイス・オプトンに分裂しました。
当時、カール・ツァイスは世界でも随一の光学技術を保有しており、それらは第二次世界大戦でもドイツ軍に大いに活用されました。ドイツが敗れ東西の対立がはじまろうとする中、それぞれの陣営がカール・ツァイスの技術者や設備などを自陣営に取り込もうとしたため、結果としてカール・ツァイスは東西に分かれて存続することになりました。
また、このときソ連に渡った技術が元となって、Heliosをはじめとするさまざまなロシアレンズが生まれていくことになります。
このあたりの詳しい話は、M42 MOUNT SPIRALさんをご覧ください。
詳しくは後述しますが、Flektogon 35mm f2.4は当時としては優れた逆光耐性を持ち、マクロを含めあらゆる用途に万能に使用できる優等生なレンズです。
Flektogon 35mmには大きく分けて3つの世代があります。これは見た目で簡単に見分けられ、鏡筒がアルミ合金のシルバーなのが第一世代、しましまゼブラ柄なのが第二世代、そして黒いのが第三世代です。第一世代と第二世代はf値が2.8ですが、第三世代は2.4に変更されています。なので、今回紹介するFlektogon 35mm f2.4は第三世代のFlektogonというわけです。
Flektogon 35mm f2.4との出会い
はじめてのオールドレンズ「Helios 44-2」を使い始めて数カ月、オールドレンズの面白さを体験し、オールドレンズのとりこになってしまっています。一時期はほとんどの写真をHeliosで撮っていましたよ。
Helios 44-2も一万円以下の値段で良く写り、オールドレンズらしいクセがあって非常におもしろいレンズなのですが、いかんせん焦点距離が58mmなので、CanonのAPS-C機ではフルサイズ換算約93mmという中望遠レンズになってしまいます。
いろいろ工夫して撮っていたものの、90mm超の望遠一本では撮りにくい被写体や状況も多く、換算50mm程度のオールマイティーに使えるレンズが欲しいなーと思い始めました。
換算50mm程度ということは、焦点距離が30~35mm程度のレンズです。Canonの純正レンズでもいくつか候補があり、またSigmaのレンズにも良さそうなものがありました。
例えばCanonのEF35mm F2 IS USM。将来フルサイズに移行しても使えます。
それから、柔らかめのオールドレンズとは真反対でキレッキレの画が撮れるという噂のSigma 35mm F1.4 DG HSM Art。こういうモダンなレンズも気になってはいました。
SIGMA 単焦点広角レンズ Art 35mm F1.4 DG HSM キヤノン用 フルサイズ対応 340544
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お手頃なのは、同じくSigma 30mm F1.4 DC HSM Art。こちらはAPS-C専用ですが、友人が使っており良さそうなので気になっていました。
SIGMA 単焦点標準レンズ Art 30mm F1.4 DC HSM キヤノン用 APS-C専用 301545
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ですが、Heliosですっかりオールドレンズにハマってしまった私は、今回もまたオールドレンズを買いたいなーと思っていました。
そこで焦点距離30~35mm程度で良さそうなレンズを探しているとき、たまたま見つけたのがFlektogon 35mm f2.4でした。憧れのカール・ツァイスです。
ネット上を調べてみると、普通に優秀な写り方をし、いろいろな用途に使用できる優秀なレンズであることが分かりました。加えて、35mmのレンズとしては異様なほど被写体に寄れるレンズだということも、このレンズの購入に至るきっかけでした。
マクロレンズと呼ばれる、被写体にグッと寄って花や虫などを大きく写せるレンズがあります。こういった写真はスマホや一眼レフカメラのキットレンズでは撮れず、特別に最短撮影距離が短いレンズでしか写しとれません。マクロ撮影についても、望遠だとか広角だとかいうベクトルとは異なる方向で、一眼レフを使うからには一度試してみたいと思っていました。
Flektogonを使えば、50mm前後の優秀な標準レンズとしてだけでなく、マクロレンズに準じた使い方をして肉眼で見えない世界も写せるということで、Flektogonの魅力がさらに高まったのでした。
そんなわけで、Helios 44-2を買ったときと同じく、海外のオークションサイトであるeBayで探してみることにします。
Helios 44-2は出回っている数も多く、美品であっても1万円以内で購入できます。日本のアマゾンでもよく売りに出ています。
44-2と比べると、Flektogon 35mm f2.4は出回っている数が少なく(レアというほどではない)、また中古市場でも人気の高いレンズであるため、美品を探すと3~4万円程度かかりそうです。
うーん、4万円はさすがに高いな~……と思いつつ、しばらくeBayを眺めていました。すると約3万円で値下げ交渉可能なFlektogonを発見!しかも、いくつもの種類があるFlektogon 35mmの中でも一番人気のある、「赤文字MC」タイプです。
すぐさま交渉した結果、1割程度値下げをしてもらえました。送料込みで、日本円で約27,000円。探せばもう少し安く手に入れることもできそうです。
前回Helios 44-2を買ったときは、ウクライナから船便ではるばる1カ月をかけて送られてきたため、この間首を長~くして待っていました(笑)。
今回のFlektogon 35mm f2.4はギリシャからの発送です。ギリシャといえばのんびりしていていいかげんなイメージがありましたが、なんと航空便に乗せて落札からわずか4日ほどで手元へ到着しました!また1カ月かかることを予想していたので、これはラッキーでした。
到着後、さっそく開封!
ついに、Flektogonがお目見えです。
まったく使用感のない美品でレンズもクリアだったので、この値段で買えたのは上出来でしょう。
Flektogon 35mm f2.4の特徴
万能
まずは、とにかく普通によく写るので、何にでも使えるということです。
スナップ、風景、ポートレート、そしてマクロまで、何でもござれです。マクロまで対応してしまうところがなんともニクいですね。これ一本でふらっと街を歩いても、大抵なんでも撮れるのではないでしょうか。
普通に現代の普及価格帯のレンズと比較しても、Helios 44-2のぐるぐるボケのようなクセもなく、写りは遜色ないと思います。もちろん、オートフォーカスには対応しておらず、逆光には弱いですが。
軽くてとりまわしも良く、Carl Zeiss Jenaの印字も含め見た目もいい感じなレンズです。とりあえずカメラにつけておく広角レンズとして、APS-Cのカメラならフルサイズ換算約50mmの標準レンズとして、あらゆる場面で活躍してくれます。
寄れる
上でマクロまで撮れると書きましたが、このレンズ、マクロレンズでもないのに異常に近接撮影ができます。どれくらい寄れるかというと、気をつけないとレンズの表面が被写体にぶつかってしまうほどです。
マクロレンズと呼ばれるレンズを持っておらず、いつか一本欲しいなと思っていましたが、Flektogon 35mm f2.4を手に入れて以来Flektogonで代用できているため、わざわざマクロレンズを買わなくていいやと思ってしまいました(笑)。マクロ撮影をメインで行う方にとっては物足りないかもしれませんが、たまにマクロでも撮りたい!という方には十分マクロレンズとしての役目を果たしてくれます。
なにより、このレンズでスナップをしているときに、ふと見つけた花や虫にさっと寄って撮るという芸当ができるのは、Flektogonならではだと思います。(もちろんマクロレンズでスナップすれば可能ですが)
スナップに便利
万能という利点とも重なるのですが、これ一本をつけてふらっと散歩しても、あらゆる被写体を難しいことを考えずにサクッと切り取れます。ほとんど得手不得手を感じることなく、なんでもいい感じに写し取ってくれるので、使っていてストレスがありません。
マニュアルレンズであり、レンズ自体を操作してフォーカスや絞り値を設定できるので、いちいちカメラを触ることなく設定を決めうちしておくのにも便利です。絞りをF8〜11程度とし、2〜3メートル先にフォーカスを設定しておけば、何も考えずにシャッターを切ってもほぼパンフォーカスとなり、被写体を探すことだけに集中して次々とスナップしていけます。ファインダーを覗かずに撮影する、いわゆるノーファインダーにもとても向いています。
Flektogon 35mm f2.4の作例
ここまでを踏まえて、Flektogon 35mm f2.4で撮った写真を見ていきましょう。
奈良に行ったときの写真です。まずはおしゃれカフェのごはんから。
ごはんを食べたあとはブラブラとお散歩します。
灯篭の穴からのぞく若草山。
奈良といえば……そう、鹿さんです。
りりしい鹿さん。ちょっとボケがうるさい気がしますが、ピント面は毛の一本一本がしっかりシャープに写っています。
えさを食べる鹿さん。鼻につくとなかなかとれません。
かわいい。
暗がりの鹿さん。
えさをねだる鹿さんたち。
藤の季節だったので、藤の名所・春日大社へ。
きれいに藤が咲いています。
繊細な花びらですね。
藤の中にありさんを発見!こんなに小さくてもしっかり写せます。
松ぼっくり。ピント面はシャープにくっきり。ボケはしっかりボケます。
何の花でしょう?水滴が付いているのは、特に寄れるFlektogonでは写真映えしますね。
Flektogon 35mm f2.4の注意点
こんな万能レンズ・Flektogon 35mm f2.4にも、いくつか弱点があります。以下の3点を留意しておけば、あとは自由に使えそうです。
逆光にはやや弱い
前述しましたが、Flektogon 35mm f2.4は逆光には弱いのです。Flektogon 35mmの第一世代モデルはレンズがシングルコーティングなので当然として、マルチコーティングになった第二世代や第三世代であっても、逆光は苦手としています。この辺りは、Flektogonがオールドレンズであるゆえんですね。
逆光では全然使えないということではなく、レンズフードを使用することでおおむね逆光によるコントラストの低下などを防げます。逆光への弱さという意味では、Helios 44-2の方が遥かに弱いです(笑)。むしろオールドレンズの中では、Flektogon 35mm f2.4は強い方だと思います。そういうわけで、Flektogon 35mmはレンズフードをぜひつけるべしと考えたほうが良さそうです。
Flektogon 35mm f2.4のフィルター径は49mmなので、私はレンズフードとしてHAKUBA ラバーフード 49mm KA-LF-49を使用しています。
遠景は少し苦手
もう一点、これは私が使用しているマウントアダプターのせいかもしれませんが、遠景を撮影するといまいちハッキリと写ってくれません。もしかしたら無限遠が出ていないのかも……。
5メートルくらい先ならともかく、ピントリングを無限遠に合わせても10メートルも離れたところを写すと、少しぼんやりした画になります。
これはFlektogonが悪いというよりは、オールドレンズ全般の特徴といえそうです。柔らかな雰囲気を出してくれるというメリットにもなるわけで、どんな画が欲しいかというところにつきます。
現代のレンズであればレンズキットのレンズであってもそこそこくっきりと写し取ってくれるので、もし無限遠を使ってくっきりした写真が撮りたければ、オールドレンズではなく現代のレンズを使ったほうが良さそうです。
ボケが六角形
最後に、絞り羽根の枚数の関係上、開放から少し絞ったあたりでは、ボケが六角形になります。同じ理由で、光源から出る光芒も6本です。
もちろんこれを表現の手段として利用することもできますが、玉ボケが出るあたりの絞り値で撮影する際には、若干の注意が必要です。
まとめ
以上、Carl Zeiss Jenaの銘オールドレンズ・Flektogon 35mm f2.4の紹介でした。
写りが良くて、なんでも撮れて、しかも寄れるのに、そこまで高くないという万能レンズであり、さすが人気があるのもうなずけます。
Helios 44-2よりも値段は張りますが、はじめてのオールドレンズとしても非常におすすめですよ。
その他、世界中で撮られた作例はこちらから見られます。
少しでも気になった方は、オークションなどで探してみると良いのではないでしょうか。そこにはオールドレンズ沼が待っています(笑)。
アマゾンでは今のところ出品がありませんでした。楽天では若干取り扱いがあるようですので、すぐに購入を検討されている方は、こちらから楽天を調べてみてください。
アマゾンで取り扱いがあるときは、以下に表示されます。
まずはお手軽にオールドレンズを楽しんでみたい!という方は、Helios 44-2がおすすめです。