写真を追い求めると、いろいろなレンズが欲しくなるもの。ただ、良いレンズになればなるほど、お値段もびっくりするくらい高くなったりします。一方で、必ずしも高画質が得られるわけではないですが、とても安く手に入れられて、味のある描写をしてくれるレンズもあります。それはオールドレンズです。
今回は私にとってはじめてのオールドレンズである、「Helios 44-2 58mm f2」との出会いから使用感までを書きたいと思います。
オールドレンズHelios 44-2 58mm f2との出会い
そもそものきっかけは、知り合いがたまたま手に入れたロシア製オールドレンズ・Helios 44-2。
オールドレンズという世界があることを知らず、最近のメーカ純正レンズばかり使用していた私は、はじめは「何それ?」という印象でした。
聞くと、ずいぶん安い値段(マウントアダプター付き1万円)で知人から譲ってもらったらしいのですが、妙に面白い写りをするらしいのです。
なにやら、ピントリングが壊れていて(?)ピントが一定の範囲しか合わなかったり、レンズに傷がついているせいなのかびっくりするくらいのフレアが出たり、鏡筒にも傷があったり、美品とは言いがたいものなのですが、妙にドリーミーな画を写しだしてくれるというふしぎなレンズ。
最近の安くても品質の良い純正レンズしか知らない私には、このレンズが異様に魅力的に写ったのでした。
そこで、eBayをごそごそと探索してみると、あるわあるわHelios 44-2だらけ!
このレンズ、カメラ初心者の私は知らなかったのですが、出回っている量も多く、オールドレンズ界ではそこそこ有名なものらしいのです。安い値段の割にしっかり写るので、はじめてのオールドレンズにもいいようです。
戦前のドイツ製レンズをコピーしたレンズで、長きにわたってソ連で作られ、多くの派生バージョンもあるらしい……ふむ……しかも値段も安いものは数十ドルからか……どうせなら綺麗なレンズがいいなー……
(カチカチ)……
お、美品……!
……(ポチッ)
というわけで、購入してしまいました(笑)。Helios 44-2。
Helios購入、そして到着!
私が買ったHeliosについてもう少し詳しく書きます。私が買ったのは、eBayで見つけたキャップ付き本体45ドル+送料15ドルというHelios 44-2。出品しているのはアメリカの業者のようですが、発送はウクライナからとのこと。
紹介文に「Mint」という表示があったので何なのか調べてみると、日本語で言う美品という意味のようでした。写真からも商品の説明文からも、レンズ・外観ともに傷がほとんど無いことを示していたので、これなら良さそうと思い購入。美品であることにこだわらなければ、もっと安いレンズもごろごろ売られていましたよ。
支払いの数日後にウクライナから発送の連絡があり、その後手元へ到着するまでは約1カ月弱。船便だったようで、やはりそれなりにかかりますね。
この間、待ちくたびれて、前から狙っていた別のレンズを一本買ってしまったのはまた別のお話(笑)。
Canon 超広角ズームレンズ EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM APS-C対応 EF-S10-18ISSTM
- 出版社/メーカー: キヤノン
- 発売日: 2014/05/29
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ウクライナからの荷物を待っている間、オールドレンズを使う際に必要になるマウントアダプターを日本のAmazonで購入します。
オールドレンズは現行のデジタル一眼レフカメラのマウントとは異なることが多く、今回もHeliosをデジタル一眼レフカメラで使うには、マウントを合わせるためのアダプターを購入する必要がありました。
Helios 44-2はM42にというマウントのレンズなので、私の持っているEOS Kiss X7で使えるよう、下記のようなM42とEFマウントに互換性を持たせるアダプターが必要になります。
K&F Concept マウントアダプター M42-EOS M42レンズ- Canon EOSカメラ装着用レンズアダプターリング
- 出版社/メーカー: Shenzhen Zhuoer Photograph
- メディア: Camera
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M42 マウントレンズ-キヤノン Canon EOS EF シリーズ(500D/40Dなど)カメラボディー対応 レンズマウントアダプター M42-EOS
- 出版社/メーカー: ハピネス・エクスペレス
- メディア: エレクトロニクス
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マウントアダプターは値段と精密さでピンキリであり、物によってはうまく着かなかったり、ひどいものは着いたら最後外せなくなったり(!)という粗悪品もあるようです。
今回はAmazonの評判を頼りに、下記のアダプタを購入しました。
かなり安価なので大丈夫かな……?と思っていましたが、特に問題なく使用できています。M42とEFマウントの変換用にオススメのアダプターです。
結局、レンズと送料そしてマウントアダプターを合わせて、約8,000円で新たなレンズが購入できたことになります。普通に市販されている最近のレンズと比べると、かなりの安さです。
Helios 44-2 58mm f2の使用感
そんなわけで注文から約一カ月がたち、念願のHelios 44-2がはるばるウクライナから到着しました。梱包材で何重にも包まれて、レンズ型にくりぬかれた発泡スチロールで固められていました。
はやる気持ちを抑えながら梱包を開くと、いよいよ念願のオールドレンズ・Helios 44-2の登場です!
EOS Kiss X7につけるとこんな感じ。撮り方のせいでレンズが大きく見えますが、実際はKissの小さなボディにも合う小ぶりなレンズです。
オールドレンズは、当然のことながらマニュアルレンズです。これまでほぼオートフォーカスに頼っていた私には、マニュアルでしかピントが合わせられないというのははじめての経験です。
もちろん、F値もカメラ本体の設定では切り替えられず、レンズの絞りリングを操作して変更します。Heliosの絞りリングはプリセットシステムと呼ばれる独特の仕組みになっていて、一見F値が逆向きに表示してあるように見えます。
マニュアルレンズは楽しい!
Heliosを実際に使ってみて実感したことは、これまでのデジタル一眼レフカメラ+最新のオートフォーカスレンズの組み合わせでは味わうことがなかった、「写真を撮っている」という感覚が存分に味わえたことです。
Heliosでの撮影手順を並べてみるとこんな感じです。ほかのプリセット絞りタイプのレンズでも同じ感じだと思います。
- まず、絞りのプリセットリング(一番レンズ表面側のF値が書いてあるところ)をガシャンと回して、使用したいF値に合わせます。この時点ではまだレンズの絞りは変化しません。個体差のせいなのかこのリングが結構固く、本体を持ってプリセットリングを回そうとするとマウントアダプターが回ってしまうのがなんとも可愛らしい(笑)。
- 次に、フォーカスリングを回してピントを合わせます。Kissのファインダーだと、絞り開放でピントを合わせるのは少し慣れが必要です。
- そしてピントが定まったら、絞りのリング(レンズ表面から2つ目の赤いポチがあるところ)を一番右まで回して、レンズを実際に絞りこみます。
- ようやく、シャッターを切る!
このように、一度シャッターを切るまでに、3つも手順が必要となります。(もちろん、同じ設定で続けて撮る際などは省略できます。)
オートフォーカスレンズなど、最近のカメラならこの手順が一瞬で(あるいはほぼ自動で)できてしまいます。その分、簡単に写真が量産されてしまい、SDカードにいまいち思い入れのない写真を大量に貯めこんでしまったり……。
一方のHeliosなら、1枚の写真を撮るためにここまで手間をかけるので、妙にひとつずつの写真に愛着が湧きます。
ちっこくてわがままで、でも設定にはしっかり答えていい感じの写真を生み出してくれるHeliosが、なんとも可愛らしく思えてくるのです。
また、1枚の写真を撮って、現像して……と、これよりもっと手間をかけるのがフィルムカメラということになるので、デジタル全盛の今でもフィルムで撮り続ける人の気持ちが少し分かった気がしました。
Helios 44-2 58mm f2の作例
Heliosでいったいどれほど不思議な写真が撮れるのかと思っていたのですが、前述のとおり美品を購入したおかげか、思いのほかしっかりした写りです。
確かに逆行の場面では普通に撮れないほど盛大なフレアが出るなど、オールドレンズならではの部分もあります。
それから、このレンズはいわゆるぐるぐるボケが出ることで有名です。上の写真でも、少しボケが回っている感じが分かるでしょうか?特定の条件がそろわないとわかりやすいぐるぐるボケは出ないようで、思いどおりに出すのは少しコツがいります。
強くぐるぐるボケを出すには、強い光源が狭い範囲からもれてくるのを画角に収めること、絞りは開放か開放近くで使用すること、比較的近い被写体にピントを合わせることがポイントのようです。木漏れ日などが比較的出しやすいかもしれません。
フレアやぐるぐるボケが、意図せずおもしろい写りをしてくれることもあり、オールドレンズならではの楽しさが味わえます。うまく扱えれば、このレンズでしか撮れない写真が撮れそうです。
Helios 44-2の作例は、近々公開予定です。
その他、こちらのページなどでも見ることができます。
まとめ
以上、はじめてのオールドレンズ・Helios 44-2 58mm f2との出会いから購入、そして使い勝手についてでした。
安くてなんともレトロで、それでいてしっかりかつおもしろい写りをしてくれるステキなレンズです。レンズへの愛着という意味では、これまで手にしたレンズの中で一番な気がします。またひとつ、レンズ沼にハマってしまいました(笑)。
特に、絞りからフォーカスからすべて自分で(デジタルカメラですが)アナログ的に操作している感じは、出てくる写真への思い入れを含め、満足感があります。この感覚を感じられただけでも、購入して正解だったと思います。
上述のとおり、eBay(手に入れられるまでが時間がかかるが安い)やヤフオク(すぐに届くがやや高い)で数千円~一万円以内ととても安く手に入れられるレンズなので、オールドレンズ未体験の方も一度試してみると良いかもしれません。
ただし、オールドレンズ沼にハマっても責任は持てません(笑)。
ちなみに、AMAZONでも買えるようです。ぐっと近くなったオールドレンズ沼、少しハマってみませんか?
こちらのレンズもどうでしょうか?