何度か記事で紹介した"ぐるぐるボケ"オールドレンズ「Helios 44-2」。このHelios 44シリーズは長い間製造されており、それぞれ若干の違いがあるたくさんの兄弟レンズがあることで知られています。
今回は、ひょんなことから体験することができた、Helios 44-2と似て異なる"キングオブボケ"オールドレンズ「Helios 40-2 85mm f1.5」について紹介します。
Helios 40-2 85mm f1.5とは
安価でよく写るオールドレンズであり、ぐるぐるボケが出ることで有名なHelios44シリーズ。以前このブログでもHelios 44-2の面白さを紹介しました。
このHelios 44-2の兄貴分ともいえるレンズが、Helios 40シリーズのレンズ「Helios 40-2 85mm f1.5」です。
Helios 40-2は焦点距離や開放F値は異なるものの、レンズの構成などはHelios 44と同じです。Helios 40-2がHelios 44-2と比べて大きく特徴づけられるのは、そのぐるぐるボケのスゴさです。Helios 44-2でも状況によって明らかなぐるぐるボケが見られましたが、Helios 40-2と比較するとかわいいもの。弟のHelios 44-2が可愛く思えるほどの、強烈なぐるぐるボケを披露してくれます。
ソ連製のレンズであるHeliosは、ドイツのレンズメーカー、カール・ツァイスのBiotarというレンズをコピーしたものだといわれています。Biotarもぐるぐるボケで有名なレンズでしたが、それをコピーしたHeliosもやはりぐるぐるボケが発生します。
Helios 44-2が58mmという標準レンズであるのに対し、Helios 40-2は85mmという中望遠レンズのカテゴリに属します。ポートレートに適したバストアップが撮りやすい焦点距離と背景をぼかせる明るさを持ったレンズをポートレートレンズと呼ぶことがあります。
このHelios 40-2も、85mmという被写体とのちょうどいい距離感や大きなぼけが得られる明るさ、そしてなによりHelios 40-2ならではの、日の丸構図で中心に置いた被写体の周りをぐるんぐるんまわるボケから考えても、まさにポートレート向けのレンズだといえるでしょう。
Helios 40シリーズにはさまざまなマウントのバージョンがあります。今回紹介するHelios 40-2はM42マウントのもので、汎用性が高く現代のカメラにもアダプタで容易に使用することができます。もっとも、Helios 40シリーズとしては、M39マウント(ゼニットマウント)であるHelios 40という個体が多いようです。こちらは一部の一眼レフカメラでは無限遠が出ないようで、注意が必要です。
M42マウントであるHelios 40-2の方が多くのカメラにアダプタで装着し使用しやすいため、最近のデジタル一眼レフカメラで使用する場合はHelios 40-2の方をおすすめします。
Helios 40-2との出会い
そんなHelios 40-2、ポートレートを中心に独自の世界を写し出せるレンズとして根強い人気があり、中古市場は大変高騰しています。落札相場は5~7万円といったところでしょうか。
私もネットで作例を見て以来一度使ってみたいなーと思っていたのですが、そんな高いレンズを簡単に買えるわけもなく、しばらくの間はHelios 44-2を横目に指をくわえて見ていました(笑)。
ところが、ある日たまたま参加したロフトで行われるカメラのイベント「はじめての『オールドレンズ』体験会」にて、偶然にもHelios 40-2に触れる機会があったのです。
photoschool.on-and-on-shop.com
この講座では、はじめにオールドレンズの特徴などについてレクチャーを受けた後、実際にオールドレンズを付けて周辺をスナップすることができます。
たくさんあるオールドレンズの中にあった、ひときわ大きくて重いレンズ。それがHelios 40-2でした。
ちなみに講座・撮影後はオールドレンズの販売も行われ、数十種類のオールドレンズが並んでいました。Helios 40-2も販売されていましたが、7万円とのことで断念……。
ですが、ロシアンレンズを中心にいくつものレンズを試してみることができました。オールドレンズに興味のある方は、一度茶屋町フォトスクールに参加してみるといいかもしれません。
Helios 40-2の作例
Helios 40-2を試せたのはわずか1時間程度でしたが、その圧倒的なボケとレンズの重さに心を揺るがされました(笑)。
さっそく、その中で撮影できた京都・新京極周辺の写真をご覧ください。いずれも特に加工していません。
圧倒的なボケ感。まるでPhotoshopでぼかしたみたいですが、撮影したままで何の編集もしていません。
絞り開放で撮ると、まるで数秒間シャッターを開けて長時間露光したかのようなボケ方になります。異空間に紛れ込んだようです。
縮小しているので少しわかりにくいですが、圧倒的なぐるぐる感。目が回りそうです。(この写真のみ少しトリミングしています。)
真ん中に人を置いてポートレートを撮るといいかもしれません。
引きから寄り。
少し絞った写真と、しっかり絞った写真。絞ればぐるぐるボケることなく普通に写ります。
APS-CであるEOS Kiss X7に付けたので、焦点距離は約136mm。とてもスナップしやすいとはいえませんが(笑)、特異なレンズを楽しめました。
f1.5という明るさのレンズをはじめて使ったこともあり、ぐるぐるボケ以上にボケの大きさにも圧倒されました。強烈にボケるせいで、まるでプライバシーに配慮して撮影後に人をぼかしたか、ある程度長い時間シャッターを開けていたようにすら見えますが、どの写真も追加の加工はしていません。
ピントはとても薄く、EOS Kiss X7のファインダーではかなり合わせにくかったです。どこにピントがきているのか分からない写真もあります。また、世界一軽いデジタル一眼レフカメラであるEOS Kiss X7と、超重量級レンズであるHelios 40-2との相性は、バランス的に決して良くはありませんでした(笑)。
ですが、Helios 40-2独特の世界はこの一時間ですっかり気に入ってしまいました。
その他、世界中の写真家が撮ったHelios 40-2の写真は以下から見ることができます。
Helios 40-2の新品が買える!?
大量に中古レンズが出回っているHelios 44-2をはじめとするHelios 44シリーズに比べ、Helios 40シリーズは生産数的にもその希少価値のあるレンズです。前述のとおり中古価格は高止まりしており、中古カメラ店でもほとんどお目にかかることがありません。
ですが、Helios 40-2、実は現在も新品が製造・販売されているのです!
調べてみるとアメリカや日本のAmazonにもこの新品のHelios 40-2と思われるものが出品されています。また、ヤフオクなどオークションサイトにも、比較的安価に新品が出品されているようです。
これを利用すれば、5~6万円程度で新品のHelios 40-2を購入できます。
この現行品のHelios 40-2ですが「New Helios」と記載しているとおり、コーティングなど一部は当時の仕様からリニューアルされているようです。なので、当時のものと比べるとある程度逆光に強いなどの特徴があるかもしれません。
それにしても、オールドレンズと区分されるレンズを多少現代的にリニューアルしているとはいえ、いまだに作り続けているとはさすがロシアといった感じですね。
まとめ
以上、魔性のぐるぐると巨大なボケを持つオールドレンズ「Helios 40-2」の紹介でした。
特にポートレートにおいて、このレンズにしか表現できない世界を写しだしてくれるレンズだと感じました。普通に撮影しただけでまるで異世界のように撮れるレンズはなかなかないと思います。
注意点としては、マニュアルフォーカスのレンズであることと、レンズ自体が非常に重い(ほぼ1キロ!)ことです。開放でポートレートを撮ると、かなりの確率でピントが微妙にずれそうな感じ。何枚も撮影したり、三脚を使用するなど工夫が必要だと思います。
その欠点を考慮しても、このぐるぐるボケはほかのレンズには代えられない魅力です。
Helios 40-2が気になった方は、ぜひ一度手に入れて試してみてください!
Helios 40-2が気になったけど、値段が高すぎる!という方は、まずはHelios 44-2から試してみるのはどうでしょうか?